北海道の離島は数々あれど、焼尻島。
焼尻島は留萌管内の羽幌町に属します。人口約180人の小さな島です。羽幌町から西に約25キロの日本海に浮かぶ島には、ジェット船だと35分で着きます。
面積5.21km²、周囲約12kmの島です。全国地図でも利尻礼文の少し下にあるこの焼尻島と天売島が描かれていないことも少なくない、悲しい思いをしている島でもあります。でも関係者が地図事業者や出版社に粘り強く抗議をして今では、かなりの地図で(当たり前のことですが)天売島と焼尻島がきちんと鎮座しています。
天売島がオロロン鳥の島として、焼尻島よりも少し有名です。でも私は小学校3年生の時に島出身の知り合いに連れて行ったもらった焼尻島の印象がとても強いのです。多分、生まれて初めて行った離島が焼尻だったこともその理由かもしれません。
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昔ながらの漁港風景がある一方で、島の中ほどに手つかずのオンコ(イチイ)の原生林、さらに広大な羊の牧場があります。そこには、島民よりも数の多い羊たちがのんびりと暮らしています。
島の中央部にあり約80ヘクタールの敷地に約200頭のサフォーク種の羊が飼育されています。
※北海道あるあるで、人口より牛が多い町は多いです。中標津や天塩がそうです。ここ、焼尻島は人口より羊が多い島です。
島にはキツネや蛇などの天敵がいないので羊たちはノンストレスでゆったり育っています。そして、日本海の塩分をたっぷり含んだミネラル豊富な牧草を食べて育った羊は、フランス産最高級ラム肉「プレ・サレ」にも並ぶレベルと高い評価を受けています。焼尻サフォークは国内でも最高級品の一つで、そのほとんどが都心のフレンチレストランなどに卸されるようで、地元の人も滅多に食べられない希少な肉です。
その特別な羊の生肉をBBQスタイルで食べられる場所は、港近くにあります。「島っ子食堂」です。フェリー到着時間に合わせて店の前ではすでに炭火が用意されています。少し遅くお店に行くと「もう閉めようと思ってるんだわ」とちょっと憎まれ口をたたくお母さんがいます。「うちの肉は最高だからレア気味で食べてほしいわ」と、肉を持ってきて少しお話しもしてくれました。2日連続で行くと、「特別だからねだ」と、メニュー以外の品を出してくれたりします。このお店のことを、サービス精神はゼロと批判する書き込みもありますが、そうとも言い切れないと思います。
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島全体の3分の1が森でオンコ原生林が広がっていることも驚きです。その数は国内屈指の約5万本とも言われています。「オンコの荘(しょう)」では、強風や積雪のために上に伸びず、地を這うように横に広がった形のオンコを見ることができます。「オンコドーム」と呼ばれるオンコの木は、中に秘密基地のような空洞があって入ることもできます。
鷹の巣園地は島の光がほとんど届かないので、真っ暗です。天の川まで見ることができ、信じられないサイズの流れ星もかなりの頻度で見られます。一緒に行った友達が、何とも文字に表現できない不思議な大きな声を出して驚きを表現していました。この島から見る星はちょっと別物です。
観光ガイドブックにも載っていない島だからこそ、島の人の暮らしが近くにあり、飾り気もなくゆったりできる、離島の中の離島が焼尻島です。