シングルマザーへの移住施策
5年前、島根県の浜田市を訪ねました。労働人口の減少を解消するため、ひとり親家庭を支援し、定住を促す試み「ひとり親移住支援」をスタートさせたというニュースを聞いたからです。地方創生のなかで、ひとり親を教育育児環境を整えたうえで、労働力として招くという動きは長野県を皮切りに始まったと思います。
そんな中で、浜田市は細かな対応が目立ち、結果も出ていたので「現場に行かなくてはダメだ」と向かいました。
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県外からの移住者を対象とし、月額15万円以上の給与、1世帯につき月額3万円以上の養育支援、家賃の2分の1以上の補助、中古自動車の無償提供、引っ越し支度金30万円支給、1年間の研修終了後の100万円の奨励金の支給、介護職員初任者研修の受講支援などを行っていました。トータルで年間400万円以上を補助になりました。
凄い金額ですが、それで労働力確保とコミュニティ維持が出来るなら安いものです。都会で小さな子供を抱えて、就職活動もままならない。そして家賃も高いという現実のなかにいるシングルマザーたちには魅力的だと思います。
その結果、浜田市には北海道から沖縄まで30都道府県から150件以上の問い合わせがあったということです。1年目で6組が移住しました。
仕事は介護が中心でしたが、果樹などの農園に就職した人もいました。
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特に素晴らしいと思ったのは、キャリアアップにも着目している定住政策です。
具体的には、
①リハビリテーションカレッジ島根への入学金30万円全額免除、月額5万円までの無利子奨学金制度、医療実習無料制度など、さまざまな支援がありました。
②IT技術者、建設、土木技術者、福祉・介護サービスの専門職、保育士などの有資格者や実務経験者に対し、県内の受入事務所で就職を前提とした就業体験を行う場合の経費の一部助成をしていました。
助成期間は3カ月以内ですが、単身者には月額18万円まで、家族同伴者には1世帯あたり3万円を加算した助成金を支給しています。体験滞在中は、地域との相性、新しい職場での自分の能力を活かせるかを試すことが出来ます。更に宿泊費用として1日7,000円を上限とした支援もありました。
おためし移住住宅に、本来の利用目的とは違うとわかっていながら、活用しないよりはましと、安上がりな観光目的にリピートや転々といくつもの町の施設を渡り歩く高齢者夫婦を泊めて、その人たちのわがままに役場職員が対応している場合じゃないと強く思いました。